株式評価において株主資本価値算定の際に、他人資本である有利子負債は企業価値から控除される。即ち以下の算定式が成立している:
株主資本=企業価値-有利子負債
DCF法において使用される資本コストであるWACCは、算定の際に株主資本と負債資本を区別しているが、有利子負債は資本構成上負債資本に該当し、株主資本を構成しないためである。
有利子負債には、社債、借入金、等が含まれる。なお、新株予約権付社債に関しても普通社債と同様に控除が必要だが、新株予約権付社債はその性格に有利子負債部分と株主資本部分(ワラント)が含まれているため、控除の際の評価方法として、両者を区分する方法と一括して控除する方法の2通りがある。
有利子負債と同様の項目として、デットライクアイテム(負債類似項目)があり、株主価値算定の際、有利子負債と同様に株式評価において企業価値から控除する。
デットライクアイテムは貸借対照表に計上されているか否かに関わらず、負債として識別可能な項目のうち有利子負債に類似する性格を有する項目である。デットライクアイテムの例としては、以下のとおりである:
オンバランス項目
- リース債務
- 退職給付債務
- 資産除去債務
- オフバランス項目
オフバランス項目
- 退職給付債務の未認識額
- ヘッジ会計が適用されているデリバティブの含み損
- 訴訟等の偶発債務
実務上、リース債務は有利子負債と同様に取り扱われるが、退職給付債務に関しては、そのNOPLAT算定時点の支払利息の取扱いに準じる必要がある。
その他、有利子負債やデットライクアイテムではないが、株主資本価値は普通株式に帰属する価値のため、種類株式、新株予約権に関しても、有利子負債と同様に調整が必要となる。