WACC(企業の平均的な資本コスト)

加重平均資本コスト(Weighted Average Cost of Capital:WACC)とは、株式評価(DCF法)で使用される割引率である。キャッシュフローを割り引くにはそのキャッシュフローを受け取る投資家の資本コストを用いる必要があるが、その調達源泉に応じて株主資本にはCAPMで求めた株主資本コスト、負債資本コストには負債調達源泉に応じた負債資本コストが使用される。株式評価におけるフリーキャッシュフローには株式資本コストと負債資本コストを加重平均したWACCが使用される。

WACCは株主資本コスト(Re)と負債資本コスト(Rd)の調達額に応じた加重平均値であり、以下の式で算定される。

例えば、企業の株主資本(E)を500万円、負債資本(D)を300万円、株主資本コスト(Re)を5%、負債資本コスト(Rd)を10%、税率(Tc)を30%とすると、WACCは以下の通り計算される。

企業の資本の調達源泉は、貸借対照表の資本構成から明らかなとおり、株主資本と負債とに区分され、各々資本コストが異なってくるため、株式評価(DCF法)においては、企業の平均的な資本コストを算定する必要性がある。また、資本構成により加重(ウェイト)のかかり方が変わるので、負債の簿価と時価の差異調整を含め、目標とする資本構成を参考とする方法もある。株式評価時において、WACCの前提となる資本構成は単一であるため、最適資本構成を選択する必要がある。なお、WACCは一般投資家が該当企業に求める期待収益率でもある。

負債資本コストの算定において、負債の調達金利は節税効果を加味した資本コストが用いられている。この節税効果を加味した負債資本コストを使用したWACCによって算定された企業価値は節税効果込みのものである。企業価値を求める際、単一の資本構成の下で使用されるWACCは計算をシンプルにすることができる。