ベータ(β)について

ベータ(β)は、株式のシステマティックリスクの測定法であり、市場の超過収益率への個別銘柄の超過収益率の感応度で表される。通常、リスクフリーレートの影響が無視できる程度に小さい環境においては、市場の超過収益率は市場の収益率(市場平均株価の変動率、株価指数の変動率)であり、個別銘柄の超過収益率は個別銘柄の株価の変動率である。このため、ベータは市場平均株価の変動率と個別銘柄の株価変動率の相関をとることにより導出される。

ベータ値が1である場合、市場平均株価が1%上昇すると、対象株式の株価も1%上昇する。また、ベータ値が-1である場合、市場平均株価が1%上昇すると、対象株式の株価も1%下落する。

株式評価においてベータは株主資本コストを算定する際にCAMPで使用され、市場リスクプレミアムにベータ値を乗ずることにより評価対象会社の収益率の市場収益率との感応度を資本コストに加味させることができる。

ベータの算出には回帰分析を使用する。ベータは市場の収益率を説明変数に、特定企業の収益率を目的変数に回帰分析を行った結果として導出される回帰直線の傾きである。東証第一部あるいは第二部上場銘柄等の場合、ベータ値は公開情報である個別銘柄の株価と市場の収益力により算定されているため、当該銘柄情報の入手によりベータ値を算出することもできるが、一般的にはベータを計算せずに外部情報提供会社(ブルームバーグ、ムーディーズ、等)から入手することが可能である。ベータはヒストリカルベータであり、入手時には、ベータ期間を2年週次ベータ、5年月次ベータ、1年日次ベータなどのいずれかを指定して抽出し、決定係数の高いベータを使用することが多いようである。

なお、非上場会社等の株式評価の場合、類似の公開企業の株価から導出したベータには、資本構成による影響等、ベータ算出に選定された類似企業に固有の要件が含まれているため、次回解説予定のベータのアンレバード化及びリレバード化が必要となる。