インカムアプローチ

インカムアプローチは、株式評価を実施する際の基本評価アプローチの1つである。インカムアプローチにおいては、将来に生み出すと期待されるインカム(キャッシュ・フロー等)に基づいて評価対象会社の価値を評価する手法である。

ネットアセットアプローチは評価対象企業の貸借対照表に基づいた株式評価手法であるのに対して、インカムアプローチは損益計算書に基づいた株式評価手法である。従って、ネットアセットアプローチは静的な評価アプローチであるのに対して、インカムアプローチは動的な評価アプローチである。換言すれば、インカムアプローチはゴーイングコンサーンとしての企業価値を計算しているものである。

 

インカムアプローチの代表的な評価法は以下のとおりである:

 

  1. DCF法
  2. 収益還元法
  3. APV法
  4. 配当還元法

 

それぞれの評価法の特徴はいかの通りである:

 

  • DCF法

インカムアプローチにおいて、今日の株式あるいは企業価値評価手法のうち最もよく利用される評価法である。

評価対象会社が獲得する将来キャッシュフロー(FCF)の現在価値を企業価値(エンタープライバリュー)とし、そこから有利子負債をマイナスし非事業資産をプラスすることで株主価値を計算する手法である。DCF法の詳細な計算過程は別のカテゴリーで記載する予定である。

 

  • 収益還元法

収益還元法とは、企業が将来生み出すであろう当期利益あるいはEBITDA(償却費等控除前利益)を収益還元率を用いて企業価値(あるいは株主価値)を計算するものである。

 

予想当期利益(あるいは予想EBITDA)÷還元利回りで株主価値(あるいは企業価値)を算出しする。

 

還元利回りは、還元対象が株主に帰属する場合には、期待株主利回りであり、株主と有利子負債に帰属する場合には、期待加重平均利回りとなる。

収益還元法は事業計画が作成されていない中小企業の株式評価に適用されることが多い。

 

3.APV法

APV法とは、将来のキャッシュフローが無借金の状態で得られると仮定して、現在価値を計算した上で、借入れをすることによるキャッシュフロー増加分(利払いにかかる節税効果)をプラスして価値算定する方法である。

DCF法の場合は、負債による節税効果をWACC(割引率)に織り込んで計算しているが、APV法では、節税効果だけを後から足し合わせて計算していく。

APVを計算する際、FCFの現在価値を計算するときの割引率としては、100%株主資本の場合の資本コストを用い、βはアンレバードβを用いる。一方、節税効果の現在価値を計算するときの割引率は借入金利を用いるのが合理的とされている。

 

4.配当還元法

配当還元法(Ⅾividend Discount Method)とは、株主への直接的な現金支払いである「配当金」にもとづいて、株主価値を評価する方法である。株主における直接的な現金の受取額である予想配当を割り引くことによって株主価値が直接に計算される。

株主の権利として配当を受け取ること以外にメリットがない少数株主の評価に適している手法といえる。相続税基本通達における配当還元方式も同じような考えたであり、過去2年間の配当金額を10%の利率で還元して、元本である株式の価額を求めようとする方式である。 同族株主以外の株主及び同族株主のうち少数株式所有者が取得した株式については、会社規模にかかわらず、配当還元価額という特例的評価方法によって評価をする。